契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
小走りで『HOTEL TACHIBANA』へと向かい、隣接するTACHIBANAの本社ビルを目指す。
社屋の方に訪れるのはこれが初めて。十階ほどのビルは~~~エントランスを入るのに緊張が増してきた。
二重の自動ドアを入っていくと、広いエントランスホールが広がる。
中央には、巨大な装花が存在感を放っていて目を引く。ホテルの方のエントランスロビーにも豪華な装花があったけれど、社屋の方にも同じように緑と花が華やかな来客を迎えてくれる。
正面奥に受付のカウンターがあり、そこにふたりの女性がかけていた。
書類を手に受付へと向かう。話を通しておくと言っていたから、もしかしたら受付で預かってくれるのかもしれない。
「すみません、千葉と申します。書類をお届けに伺いました」
そう伝えると、話しかけられた受付の女性は「お待ちしておりました」と丁寧に頭を下げ、奥のエレベーターホールを手で示す。
「あちらから十階にお上がりください」
「あ、はい、ありがとうございます」
どうやら直接届けるように話が伝わっているようだ。
足早にエレベーターホールに入り、上階に向かうボタンを押す。数秒すると二基あるうちの手前側のエレベーターが到着した。
社員だろうか、スーツの男性がふたり乗っているエレベーターに軽く頭を下げて乗り込み、教えられた十階を目指す。
「お姉さん、うちの社員じゃないよね?」
「見ない顔~」