契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
突然、背後から声をかけられ振り返る。
先にエレベーターに乗っていた男性ふたりに急に話しかけられた。「あ、はい」と、来客であることを認める。
「ごめんごめん、急に話しかけられて怖いよね」
「そうだよ、怖いだろ。この人、好みの子だとすぐ声かけちゃうから」
微妙な話になり、急激に顔が引き攣る。彼らの行き先であろう六階で扉が開いたものの、なぜだかひとりが『閉』を押してエレベーターを閉めてしまった。
「今度でもいいからさ、飲みに行こうよ」
「おいおい、早いな誘うのが」
早くこの場を去りたい。
まさか、こんなエレベーターの中でTACHIBANAの男性社員に声をかけられるなんて思いもしなかった。
「連絡先交換しようよ」
早く到着して。そう心の中で叫んだ時、「ポン」と到着を知らせる音が鳴り、目の前の扉が開いた。
「降りちゃうの? 連絡先だけ教えていってよ」
「ごめんなさい、失礼します」
エレベーターから出、ぺこりと頭を下げる。
顔を上げると、エレベーターの中のふたりが私の後方に揃って目を向けていた。次の瞬間、ふたりして頭を下げる。
何事だろうと振り向くと、エレベーターホールには眼鏡をかけたスーツ姿の男性の姿が。
私に向かって丁寧に頭を下げ「お待ちしておりました」と挨拶する。
受付から、私が到着し訪問することがすでに伝えられていたのだろう。秘書の方だろうか。
慌ててぺこりと頭を下げる。