契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。社長秘書の加賀(かが)と申します」
サラサラの中分けの黒髪に、シルバーフレームの眼鏡をかけ、きっちりと濃紺のスーツを着こなす雰囲気は、知的な印象を与える。
蓮斗さんの秘書だという加賀さんとは初対面だ。
「初めまして。澪花と申します。いつもお世話になっております」
そう言ってみて、間違えた⁉と一瞬焦る。でも、加賀さんは「こちらこそ、いつもお世話になっております」と言葉を返してくる。
私が蓮斗さんの結婚相手だということは加賀さんもすでに知っているはず。だとすれば、妻として今の挨拶は間違っていないはずだ。
「社長がお待ちです。ご案内いたします」
加賀さんに先導され、十階フロアに足を踏み入れる。
他の階は見ていないけれど、この階は廊下も絨毯が敷かれ重厚な空間。オフィスビル内のはずなのに、ホテルの中のようだ。
日本で屈指のホテル事業を展開する大企業なのだから、そこら辺の一般企業の社屋とはわけが違う。
ここに訪れてから、こんな立派な会社のトップである蓮斗さんはやっぱり住む世界が違う人だと思い知らされている。