契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「あのこれ、頼まれた書類です。デスクにあったものをそのまま持ってきたんですけど」
「ありがとう。助かる」
書類を受け取り、蓮斗さんは私の背に手を添える。「澪花、こっちに」と、応接セットのソファに連れていかれた。
「失礼します」
蓮斗さんと共にソファに腰を落ち着かせる。同時に両手を取られ、突然のことに目を見開いた。
「手が冷たい」
「あ……大丈夫です」
私の手を包み込む蓮斗さんの手が温かくて、鼓動が早鐘を打ち始める。温めるように優しくさすられると、途端に落ち着かない気持ちが押し寄せて視線が宙を彷徨った。
「持ってきてもらったこの書類を処理したら、その後に少し空きの時間ができる。ここで少し待ってもらっていいか、送っていく」
「わかりました」
蓮斗さんは私から手を離し、書類を手に足早に奥のデスクへ向かう。
チェアに腰を下ろし、私が持ってきた封筒から書類を取り出し目を通し始めた。
紙がめくられる音が静かな部屋に時折聞こえてくる。
少し前まで私の手を握っていたのに、今は真剣な目をして書類を見つめている。しばらくするとデスクの引き出しから印を取り出し、書類に捺印していった。
それを終えると、スマートフォンを手に取りどこかに連絡をする。会話から、相手は先ほどの加賀さんだとわかった。
数分後、部屋の扉がノックされ、「失礼します」と加賀さんが入室してくる。
加賀さんは今の書類一式を受け取り、蓮斗さんとなにか話をすると、またひとり部屋を出ていった。