契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「観察できたか」
「えっ、あ」
蓮斗さんがデスクについてから、今、加賀さんが書類を持って出ていくまで、気づけばじっと蓮斗さんのお仕事の様子を見つめていた。
蓮斗さんは一切こっちを見なかったけれど、私が見ていたのを気づいていたのかもしれない。いや、気づいていたのだろう。
「ごめんなさい、つい見てしまいました」
素直に白状すると、蓮斗さんはふっと笑う。
「別に謝ることはないだろ。むしろ俺は光栄なことだ」
「光栄って……」
そんな風に言われるとどんどん恥ずかしくなってくる。
「今日はこのあと十七時から急遽会議が入ったんだ。それまでの時間、少し一緒に過ごせたらと思って」
「そうなんですね」
昼過ぎに帰国して、即日会議に出席するなんて多忙すぎる。一日のスケジュールも分刻みという感じなのかもしれない。
蓮斗さんは席を立ち「行こう」とそばにかけてあるスーツの上着を手に取る。
「せっかく新居での生活が始まると思ったら、早々にひとりにして悪かった」
「いえ、お仕事ですから仕方ないです」
蓮斗さんに続いて社長室を出る。
一歩後ろを歩き、さっき乗ってきたエレベーターに乗り込むと、蓮斗さんは地下一階を階数指定した。