契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
ふたりで一緒に玄関を入るのは、これで三度目。ここに初めて来た時、引越しをした日、そして今日で三度目になる。
リビングに入って見た時刻は十四時五十五分。蓮斗さんは十七時から会議だというから、恐らく十六時過ぎにはここを出ることになるのだろう。
「なにか淹れます。コーヒーとか紅茶とか、なにがいいですか?」
キッチンに入りながら蓮斗さんに声をかける。彼はリビングの広い窓から空を見上げていた。
「どちらでもいいよ。澪花が飲みたい方に合わせる」
そう言われて、作ったチョコレートプリンのことを思い出す。
今晩何時に帰宅されるかわからないから、バレンタインとして渡すなら今がチャンスかもしれない。
でも、今になって出すことを躊躇してしまう。
甘い物が好きか嫌いかもリサーチしていなかったし、そもそも、バレンタインという行事に乗っかって手作りでスイーツを用意したなんて浮かれている人みたいだ。
冷蔵庫を開けたまま考え込んでしまい、早く閉めてくれとお知らせブザーが鳴ってハッとする。
「どうした?」
「ひゃっ」
それと同時、突然背後から胴に蓮斗さんの手が回された。後ろから抱き寄せられた体勢に瞬きを忘れる。