契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「開けっ放しはやめましょう」


 どこかふざけたような口調で言った言葉が、耳のすぐ上から聞こえてくる。蓮斗さんの手が冷蔵庫の扉を閉めた。


「あ……あの、甘い物って嫌いじゃないですか?」


 散々悩んでいたくせに、勢いあまって訊いてしまう。

 この状況に動揺しすぎたせいだ。


「嫌いじゃないよ」

「でしたら、実は昨日作ったものが……」


 閉められたばかりの扉を開き、バットに並べて冷やしているチョコレートプリンに手を伸ばす。

 私に回っていた蓮斗さんの手が自然に離れていった。


「チョコレートプリンを、作ったんです。よかったら食べませんか?」

「へぇ、お菓子が作れるのか。ぜひいただく」


 蓮斗さんは私の取り出したチョコレートプリンへ視線を落とし微笑を浮かべる。


「じゃあ、紅茶を淹れますね」


 そそくさと紅茶を淹れる準備に取り掛かると、蓮斗さんはキッチンから出ていった。

 心臓がドキドキ高鳴っている。

 突然急接近され、後ろから腕なんか回されたせいだ。ちょっとバックハグみたいな感じだったなんて思い返すと、顔まで熱くなってくる。


「でも何故、チョコレートプリンを?」

「……へっ、あっ」


 急に話しかけられ、驚いて手にしていた紅茶缶の蓋を落としてしまう。心の中で〝少し落ち着け、私!〟と自分に声をかけた。

< 127 / 199 >

この作品をシェア

pagetop