契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「開けっ放しはやめましょう」
どこかふざけたような口調で言った言葉が、耳のすぐ上から聞こえてくる。蓮斗さんの手が冷蔵庫の扉を閉めた。
「あ……あの、甘い物って嫌いじゃないですか?」
散々悩んでいたくせに、勢いあまって訊いてしまう。
この状況に動揺しすぎたせいだ。
「嫌いじゃないよ」
「でしたら、実は昨日作ったものが……」
閉められたばかりの扉を開き、バットに並べて冷やしているチョコレートプリンに手を伸ばす。
私に回っていた蓮斗さんの手が自然に離れていった。
「チョコレートプリンを、作ったんです。よかったら食べませんか?」
「へぇ、お菓子が作れるのか。ぜひいただく」
蓮斗さんは私の取り出したチョコレートプリンへ視線を落とし微笑を浮かべる。
「じゃあ、紅茶を淹れますね」
そそくさと紅茶を淹れる準備に取り掛かると、蓮斗さんはキッチンから出ていった。
心臓がドキドキ高鳴っている。
突然急接近され、後ろから腕なんか回されたせいだ。ちょっとバックハグみたいな感じだったなんて思い返すと、顔まで熱くなってくる。
「でも何故、チョコレートプリンを?」
「……へっ、あっ」
急に話しかけられ、驚いて手にしていた紅茶缶の蓋を落としてしまう。心の中で〝少し落ち着け、私!〟と自分に声をかけた。