契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
口の端から吐息が漏れていく。慣れない反応を恥ずかしく思いながら、離れた蓮斗さんの端整な顔を見上げた。目が合うと、彼は窺うように私を見つめる。
「普段からよくあるのか、知らない男に声をかけられることは」
「な、ないです!」
ナンパのようなものをされたことは今までほとんどない。さっきのはたまたまだ。暇つぶしのようなものだろう。
「そうなのか? 今更だが、ひとりで歩かせるのが心配になってる」
「そんな、大丈夫ですよ!」
蓮斗さんが意外にも心配性で内心驚く。
誰がどう見ても美しくて素敵な女性にならそんな心配をするのは当然だけど、私になど心配ご無用だ。
「あの、さっき言っていたことですけど、左遷は厳しすぎませんか……?」
自分のせいで彼らの人生が大きく変わってしまうかもしれないのは、やっぱり居たたまれない。
「厳しい? そんなことないだろう」
「ありますよ、私に少し声かけたくらいで、そんな……あの方々にも事情があるでしょうから、左遷は」
「事情とは?」
「え、たとえば……家族がいれば、奥様やお子さんの負担にもなりますよね? 地方に行くなら、単身赴任なら家族がバラバラになってしまうし、転勤となれば、もしお子さんが学生なら転校とかになって友達と離れ離れとか、可哀想ですから」
思いつくことをあれこれ挙げていくと、蓮斗さんは私をそっと抱き寄せる。耳元に唇が近づいた。