契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「そこまで考えるなんて……やっぱり澪花はいい女だな」

「そんなことないです!」

「自覚していないのがまた可愛い」

「だから、そんなこと!」


 たじたじになる私を蓮斗さんはくすくすと耳元で笑う。髪を指で梳き、後頭部を撫でた。


「わかった。今回は澪花に免じて、左遷は考え直す」

「本当ですか? 良かった」

「でも、澪花には近づけないようにしよう」

「大丈夫です。たとえ会って話しかけられたとしても、私は男性とは話すの苦手ですから」


 初めは、蓮斗さんともこんな風に話すことはできなかった。

 彼の誠意や真摯な姿に少しずつ心が溶かされていった結果だ。


「幸せな時間はあっという間に過ぎるものだな」


 そんな言葉を聞いて見た腕時計の時刻は十五時四十五分。もうそろそろ蓮斗さんは会社に戻らなくてはいけない時間だ。


「今晩は帰りが遅いかもしれない」


 腕を解きながら蓮斗さんが言う。


「そうですか。夕食は一緒には厳しいですかね?」

「そうだな、先に食べていたほうがいいと思う」


 初めて一緒に食事ができると思っていたから少し残念。でも、こればかりは仕方ない。


「わかりました」


 蓮斗さんの指先が頬に触れる。近距離で視線が重なり合ってどきっとした。


「そんな顔しないでくれ」


 そう言われて、残念な気持ちが顔に出てしまっているのだとハッとする。

 蓮斗さんはふわりと笑って触れるだけのキスを落とした。

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