契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「澪花」


 マンションを出てすぐ、となりにいる蓮斗さんが声をかけてきた。

 目を向けた私の手を取り、「大丈夫か」と訊く。

 きっと、緊張が露わになっているのだろう。


「ごめんなさい。やっぱり、緊張してきました」

「相手の親に会うんだ、緊張はするよな。俺も、澪花のお義母様に初めて挨拶した時は緊張した」

「そうだったんですか? 全然そんな風には……」

「見えなかったって?」


 蓮斗さんはくすっと笑う。


「大丈夫だ、普段通りの澪花でいれば。俺がそばにいる」


 蓮斗さんから心強い言葉をかけてもらい、しっかりしようと自分自身にも言い聞かせる。

 いよいよ目的の高級割烹店に到着し、店前で車が停車した。

 石畳が出迎え、暖簾の下がる玄関先にはトクサが植えられている。

 店前植えられているのはもみじのようで、今は赤い新芽がをつけている。

 蓮斗さんにエスコートされて、お店の中へと入っていく。


「あら、蓮斗」


 入り口を入った先に男女の先客がいて、その女性の方が振り返り様に声を上げる。

 心の準備が完了する前にエントランスでご両親と対面してしまい、じわりと背中に汗をかいた。

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