契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
きっと、私の母と同世代であろうお義母様は、老いを感じさせない美しい人だ。
艶のある黒髪はアップスタイルにまとめている。
額にも、目尻にも、ほうれい線も見当たらず、ぴんと張った肌もきれいだ。美容にもかなり投資されているに違いない。
顔立ちは、目元や鼻だろうか、蓮斗さんを彷彿とさせる。お義母様がきりっとした美人だから、その部分も蓮斗さんが受け継いだのだろう。
「蓮斗とは、年末のクリスマスパーティーで知り合ったと聞いたけれど……あなたからアプローチしたの?」
いきなり直球な質問を受け、言葉に詰まる。反射的に「いえ……」とだけ声が出ていた。
「声をかけたのは俺です。ウェイターとぶつかってしまい、服を濡らしてしまったため対応に当たらせてもらったのがきっかけで」
私の代わりにすかさず蓮斗さんが説明をしてくれる。
出会いは確かにその通りだ。
「そう。それで、その時に蓮斗と連絡の交換をしたの?」
「いえ、澪花は迷惑をかけまいとその時も置手紙だけして立ち去っていたので、そのようなことは」
「置手紙?」
「はい。着替えのドレス代は支払いにくると書き残し、名前だけで連絡先はなく。手持ちのお金まで置いてでした」