契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「澪花さん、お勤め先は?」

「あ、はい。ナナキタ食品で勤めております」

「ナナキタ食品……」


 どう思われたのかよくわからない反応で、どこを見たらいいのか視線が泳ぐ。


「ご家族は?」

「家族は、母と、姉がひとりいます」

「お父様は?」

「父は、私が高校生の時に他界しまして……」

「そうなの、そんなに早く」


 話の流れから、蓮斗さんは私の家の事情は話していないのかもしれないと感じ取る。

 父がすでにいないことも、母が病気を患っていることも。

 だとすれば、蓮斗さんが母の治療費やうちの負債を肩代わりしてくれたことも、もしかして知らないのかもしれない。

 私としては、蓮斗さんにしていただいた厚意をご両親にも知ってもらったほうがいいと思う。

 でも、蓮斗さんがまだ話していないのは考えやタイミングをみているからかもしれない。

 どちらにせよ、私が今ここで話を切り出すのは筋違いなのだと思う。


「そう言えば蓮斗、出張から戻ったばかりよね? 中国視察はどうだったの?」

「ちょうどオープン一カ月のタイミングでしたが、半年先まで予約も埋まっていました」

「好調なスタートね。近々また見に行く予定をたてようと思ってるわ。シンガポールの方もそろそろ着工ね──」


 それから話題は仕事の内容へと変わっていき、部屋にはお義母様と蓮斗さん、時たまお義父様の声が聞こえた。

 私は邪魔にならないよう黙って、ただ黙々と食事をいただいていた。

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