契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
顔合わせの食事会からマンションに帰って来たのは二十一時前。玄関を入ると、ふっと肩の力が抜け緊張から解放されたのを感じた。
「今日はありがとう。気を遣って疲れただろう」
「いえ。こちらこそ、ご両親に会わせていただきありがとうございました」
リビングに入った蓮斗さんは、スーツのジャケットをソファに投げ置き、そのまま腰をかける。
背中を預け、遠くを見るような横顔は、どこか気分が沈んでいるように私の目に映った。
特に声をかけることもせず、そっとしておきながら、キッチンに入りコーヒーを淹れる。
その間もちらちら様子を見ていたけれど、蓮斗さんは同じ体勢のままだった。
「コーヒー、良かったら」
ふたり分のカップを手にソファに向かい、隣に腰かける。
蓮斗さんは私に声をかけられてやっとソファの背もたれから体を起こした。
「ありがとう」
「いえ。あの、大丈夫ですか?」
「え……?」
「私の、勘違いならいいんですが……蓮斗さん、元気がないような気がして」
そんな風に見えても、男性にそんなことを訊くのは失礼だったかもしれないと一瞬思った。
でも、蓮斗さんはわずかに表情を緩めて私の頭をそっと撫でる。