契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「結婚のことが原因だろうな。俺がなかなか相手を決めず煮え切らないから、父はTACHIBANAの発展のためにも身を固めろと急かしていたし、母は自分の用意した見合いを何度も蹴られて気に入らないようだ」
「そうだったんですか……」
蓮斗さんは目を伏せ小さく息をつく。
「あまり、息子として親から接されてこなかった」
「え……?」
「ふたりとも、あまり家にはいない人間だったから。食卓も一緒に囲んだことはほとんどない」
衝撃的な事実に言葉を失う。
両親と食卓を共にしたことがほとんどないなんて、私の感覚からすれば考えられない。
使用人などが食事は用意してくれて、ひとりで食事をとっていたのだろうか。それはあまりに悲しすぎる。
「息子としてではなく、財閥の跡取りとしてしか見られていない。物心ついた頃から、なんとなくそれはわかってた」
胸がきゅっと締め付けられて苦しい。
大人になった今はともかく、幼少期から息子として見てもらえていなかった自覚をしているなんて酷すぎる。
普通の子どものように、親からの愛情を受けてこれなかったなんて……。