契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「澪花がなにも言わなくてもわかってる。大丈夫だ、なにも心配いらない」
手を伸ばし、助手席のシートベルトを引き出す。澪花のシートベルトを装着した。
こんな風に自分が不在の間に澪花に近づき追い詰めるようなことをするのであれば、母であろうと許しはしない。
今までは両親に従い、大抵のことは言う通りに生きてきた。
でも、澪花のことだけは、それだけはなにがあっても譲れない。
「蓮斗さん、あの、どちらへ?」
櫻坂を上がっていく車内で、涙を拭った澪花が訊く。
「母と話をする。澪花のことを、改めて認めてもらう」
「え……」
「大丈夫、澪花はとなりにいるだけでいい」
守衛在中の住宅地入口に車が近づくと、ナンバーを検知して門が開いていく。
四月頭から数日間、母は中国にニューオープンした系列ホテルに滞在予定だと加賀から予定は聞いていた。ちょうど帰国して在宅中だと読んでいる。
しばらくぶりの実家に到着し、車のまま開いた門を入っていく。
玄関前の車寄せに停車し、助手席に回って澪花を降車させた。
困惑が表情から滲み出ているのを目の当たりにして、もう一度「大丈夫」としっかり手を握る。
帰宅を知った使用人たちが玄関扉を開け出迎えた。