契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
なにが正解で、なにが不正解なのか。
もしも、を考えれば、今とは違う世界がここにはあったのかもしれない。
でも、ひとつだけはっきりしていることがある。
生涯を共にする女性は、自分の心を最優先させる。
「だからこそ、俺は俺の愛する人と幸せな家庭を築く。そこだけは譲れない」
こんな風に、両親の目が揃って真剣な眼差しをしてこっちを見ている光景は生まれて初めてで、三十二年間生きてきてやっと向き合ってもらえたような気がする。
それだけ大きな主張をしたということだ。
「蓮斗、少し冷静になって──」
「もしそれでも邪魔をするなら、絶縁してもらっても構わない」
「絶縁て、なんてことを」
母が青ざめた顔を見せ、普段なにごとにも動じない父も「蓮斗」とソファを立ち上がる。
「冗談を口にしたつもりはない。返事は後日でも構わない」
伝えたいことをすべて口にし、澪花の手を引いてその場を立ち去る。
「蓮斗、待って──」
背後から呼び声が聞こえたと同時、ガラスが割れる音と、父が母の名前を叫ぶ。
振り返ると、ソファとローテーブルの間に母が倒れていた。