契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
その昔、お義母様も今の私と同じ想いで、こんな言葉を口にしたのかもしれない。そんなことをふと思う。
そんなお義母様が今、自分の人生を振り返ってみたら……その答えを聞いてみたくなった。
「お義母様は、お義父様と一緒になられて、これまでの人生、不幸せでしたか……?」
見つめ合っていたお義母様は、ベッドの花柄のシーツへと視線を落とす。
そして広い窓の外に視線を上げると、その顔に微笑を浮かべた。
「いえ、幸せだったわ。辛くてもね」
その言葉を聞いた瞬間、何故だか喉の奥が詰まり、鼻の奥がツンとした。同時に視界が潤んで、涙が浮かぶ。
そんな時……。
「明美」
いつの間にか病室の入り口にお義父様が立っていた。
今の会話を聞いていたのだろうか。
ベッドに近づいてくるお義父様に頭を下げる。
「あなた……」
お義父様はそばまでやってくると、お義母様に優しい笑みを浮かべて見せた。
厳格な印象しかないお義父様の初めて見せた表情に、きっとこれはお義母様にしか向けない顔なのだろうと察する。
「澪花さん。これまでの、君に対する妻の行いをどうか許してほしい。彼女なりの想いがあったことを、わかってほしいんだ」
「とんでもございません。重々承知しております」