契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
あれよあれよという間にここまで連れてこられちゃったけれど、本当にこのドレスに着替えていいのだろうか。
そもそも私の不注意でこんなことになったのに、ここまでしてもらう必要があるはずもない。
それにしても、声をかけてきたのがこのホテルの代表取締役だなんて思いもしない。
スタッフに代わって謝罪したり、この場所の手配なんかも指示していたけれど、まさか社長だなんて……。
手に持ったままのドレスをよく見ると、海外のハイブランドのドレスだということに気づいてしまう。
途端にずっしりと重たく感じてしまい、着用することがより躊躇われた。
どうしようと立ち尽くしていると、外からドアがノックされる。
「着替えられたか」
「え、あ、すみません、まだです」
「そうか。ゆっくりでいい」
もたもたしているうちに橘社長は戻ってきてしまい、どうやらこの前で待たれているようだ。
もうどうしようかと悩んでいる場合でもない。
観念して、お借りしたドレスへの着替えを始める。服を着るだけことに、こんなに心拍を乱して緊張した経験はなく、細心の注意を払って袖を通していった。