契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
それから約数十分後──。
鏡の中の人は誰だろうと思うくらい、私は自分の姿に呆然としていた。
これが、私……?
普段はなにもしない髪を巻いてアップスタイルにし、メイクもプロが施した顔立ちがはっきりする仕上がり。唇もツヤっと瑞々しく光っている。
自分ではベースメイクと、簡単なアイシャドウとマスカラ程度のメイクしかできない。
だから、こんな風にフルメイクをした自分には初めて出会った。
これなら、少しはこんな素敵なドレスを身に纏うのも許されるかな……。
「思った通りだ……」
鏡越しに目が合い、じっと見つめられる。
ヘアメイクが仕上がる頃、橘社長は再び姿を現した。そしてその後はメイクをしてもらっている私の後方で仕上がりを待っていた。
「よく似合っている。美しい」
さらりと出てきた言葉にドキンと心臓が音を立てた。
美しい男性にそんな言葉をかけられるなんて破壊力が半端なくて、慌てて鏡の中の彼から目を逸らす。
いや違う! 美しいは私じゃなくてこの高級ドレスのこと。なにを自分のことだと思って意識してるの。