契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「失礼」


 どう反応したらいいのか困惑し、間が持たなくなっていたタイミングで、橘社長はスーツのポケットからスマートフォンを取り出す。

 再び着信が入ったらしく、彼は「すぐに戻る」とまた部屋を出ていってしまった。

 ひとり部屋に取り残され、ふっと現実世界に舞い戻ったような感覚に陥る。

 いけない、私はなにをしているの⁉

 姉の忘れ物を届けに訪れて、どこをどう間違えてこんな大変身をさせてもらったのか。

 急に焦燥感に襲われて、椅子から立ち上がり自分の荷物に飛びつく。

 早いところここから出ないといけない。

 その思いだけでバッグから財布を取り出し、持っているありったけのお札をテーブルに置く。

 間違いなくこんな金額ではこのドレスの足しにもならないけれど、代金は後日でも払いにこなくてはならない。

 財布をしまい、その代わりに手帳からメモを切り取りペンを手にした。

 お礼の言葉と、ドレスのお代は支払いに訪れると書き残す。

 用意できたお金とメモを化粧台の上に置き、自分の荷物を持って衣装室を後にした。

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