契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
なんということだろう。
昨日散々迷惑をかけておいて、忘れ物まで届けてもらうことになるなんて。申し訳なさすぎてくらくらしてきた。
「本当にすみません。忘れ物まで届けていただいて──」
「そんなことは構わない。それより」
私の声を遮るようにして、男性は私に一歩詰め寄る。
急に距離が近づいて、反射的に体を反っていた。
「昨夜はどうして勝手にいなくなってしまったんだ?」
「え……」
どうしてって、そんなことを訊かれても困る。
そもそもあのパーティーに行くつもりもなかったし、仕方なくお使いを頼まれて訪れただけだ。私が望んで出席していたわけではない。
「もう少し話をしたいと思っていたのに、戻ったら姿がなかった」
「えっ、あの」
さらりと出てきた言葉に動揺したところで、橘社長の訪問を対応してくれた受付と目が合い一気に気まずくなる。
「あ、あの……外に出ませんか?」
彼にそう提案し、会社を後にした。
無言のままエレベーターに乗り込み、一階までおりていく。
ツインタワーオフィス棟の一階エントランスホールは、土曜日ということもあり人の出入りは格段に少ない。
エレベーターホールから出てエントランスホールの目立たない隅っこで足を止めた。