契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「すみません、場所を移していただいて」
さっき言っていたことは社交辞令だとしても、会社の人間が聞こえる場所で話すのは気が引ける。
「構わない。で……さっきの答えがまだ聞けていないけど」
「えっ……」
まさかそこを追求してくるとは思わず、あからさまに困った顔を見せてしまう。
でも、橘社長はなぜだか口角を上げる。それがどこか意地悪っぽい笑みで、どきりと鼓動が高鳴った。
「そんなに俺が嫌か? 話したかったと、結構ストレートに言ったつもりだけど」
えっ、えぇ?
「い、嫌とかそういうこと以前に……困るんです!」
「困る? なぜ」
どうしてこんなに聞き出そうとしてくるのか、訳がわからない。
でも、答えるまで逸らされなそうな真っ直ぐな視線に、仕方なく口を開いた。
「それは……どちらかというと、苦手だからで……」
「苦手?」
「はい。男性が……」
語尾が消えていく。こんなこと、ここで告白しているのもよくわからない。
でも、本当に男性はもう極力避けて生きていきたい。それに加え、生きる世界の違う方だ。こうして立ち話するような身分の相手ではない。