契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「苦手、か。その理由はわからないが、俺は君に興味を持った」
「えっ?」
聞き間違えかと思い、思わず失礼な反応をとってしまう。
そんな私にも、橘社長はふっと笑みをこぼした。
「幼少期から、興味を持ったことはとことん追求するタイプなんだ」
彼の口から出る〝興味〟という言葉に困惑が広がる。
私に興味を持ったって、私、この方に興味を持たれるようなことした? なぜ……⁉
「まぁいい。仕事中に悪かった。今日は仕事は何時までだ」
「え……仕事は、定時なので十七時半までですが」
「その後の予定は」
「予定は、特には……」
答えると、橘社長はスマートフォンを取り出し画面に目を落とす。
「わかった。十七時半にここに迎えにこよう」
「……。えっ?」
「昨日話せなかった分、少しあなたと話がしたい。時間をもらえないか?」
まさか改めて時間がほしいと言われるとは思わず、驚いて返事が出てこない。
「なぜ? と思ってはいるけど、全力で拒否をするというわけでもなさそうだな。嫌ならこの場所を避けて帰ればいい」
そういう言い方はズルい。
でも、はっきりきっぱり今この場で断りの言葉が出てこない私が悪い。うまく丁重にお断りするセリフが出てくれば話はここで完結するのに。
そう思っているうちに、橘社長は「じゃ」と私の前から颯爽と立ち去っていく。
「あ、あの」
なんとか振り絞ってそう声をかけた時にはもう彼に声は届いていなかった。