契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
病院から電話がかかってくることは基本的にはない。
なにか緊急の事態にしか連絡はこないものと認識しているから、嫌な胸騒ぎを覚えた。
「はい、千葉です」
『千葉さんの携帯電話でしょうか。深緑台総合病院です。先ほどですが、お母様が発作を起こされまして、治療対応中なのですが、こちらの方に来ていただくことは可能でしょうか?』
恐れていたことを告げられ、心拍数が上がっていく。
「あの、母は、大丈夫なのでしょうか?」
『現在は安定し始めています。ですが、今後のことに関して医師からも話がありますので──』
「わかりました。すぐに向かいます」
病院との通話を終わらせ、部署内の同僚に声をかける。母親の病院から呼び出しだと話すと、もう終業時間間近だし、気にせず向かっていいと言ってもらえた。
お言葉に甘えてバッグとコートを掴んでオフィスを飛び出す。
安定しているという言葉にホッとはしたけれど、こういうことは過去に何度もある。
遺伝的な心臓疾患を患っている母が受けるべき手術は、今の病院では難しいと説明されている。
その上、心機能が弱いため、相当な設備と人員の整った病院でないと術中の管理が困難だという。
以前、渡米しての手術を提案されたこともあったけれど、金銭面から断念せざるを得なかった。