契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


 エレベーターが一階にたどり着き、コートを羽織って足早にエントランスホールを出口に向かう。

 急いでいるし、駅周辺でタクシーを拾って隣町まで行こうと思った時だった。

 出て行こうと目指す自動ドアの先から現れた姿にハッとする。

 今さっきまでどうしようかと考えていたのに、母の病院からの一報ですっかり頭からすっ飛んでしまっていた。

 でも、今ゆっくり話している暇はない。


「どうした、なにか急用でも?」


 対面した橘社長は、足早にやってきた私の様子に勘が働いたのかもしれない。

 そう訊かれて「はい」と目を見て頷いた。

 でも、足は止めない。「ごめんなさい」とだけ言い、そのままエントランスを出ていく。そんな私の横に並んで歩きながら、橘社長は「急いでいるなら送ろう」と言った。


「いえ、そんなわけには。大丈夫です、タクシーで」

「タクシーを捕まえる方が時間がかかる。今日はクリスマスだから捕まりにくい」


 そう言って私の手首を掴んだ。

 急なことに驚いたものの、「車で送ろう」とそのままタワー前の路上パーキングに手を引かれていく。

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