契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「お母様が?」

「心臓が悪くて、入退院を繰り返しているんです」

「オペは」

「今入院している病院では、難しいと言われています。執刀できる医師がいない、と。なので、現状維持といいますか……」


 そこまで話すと、橘社長の「そうか」という声を最後に車内には沈黙が流れる。

 橘社長の気の利く判断で抜け道を通り隣町まで向かってもらったため、病院までの時間は通常より早く感じられた。

 車は病院内のロータリーまで入り、正面玄関前で停車する。

「ありがとうございます」と言いながら助手席のドアを開けた。

 ドアを閉める前に車内を振り返る。


「本当に、ありがとうございました! 大変助かりました」

「礼はいい。早くお母様の元へ」

「はい!」


 ぺこりと頭を下げ、ドアを閉める。最後にもう一度声に出して「ありがとうございました」と言って病院玄関へと駆けていった。

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