契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
クリスマスを終えるとあっという間に大晦日となり、新しい年を迎えた。
お正月休みも過ぎ去り、またいつもの日常が始まった一月上旬。
昼休み、私はひとりオフィス棟二階にあるコンビニエンスストアにいた。
ランチは基本、節約のためお弁当を持参している。
今日はどうしても淹れたてのコーヒーが飲みたくなって、コンビニの一杯百円のコーヒーを買いに出てきていた。
コーヒーを買い求めにきたついでに、二階から出られるテラスに出てみる。
今日は一月とはいえ冷たい風が吹いていることもなく、太陽も出ていて暖かく感じられ、テラスでランチを取ることに決めた。
温かいコーヒーに口をつけながら、ふと見渡した視線の先に『HOTEL TACHIBANA』の立派な建物が目に入る。
昨年末のクリスマスの一件はまるで夢の中の出来事だったように、あれから橘社長とは会っていない。
母の容態は落ち着いたものの、年末年始は普段とは違う冬休みだった。
病院に何度も通ったし、新年を祝うムードは皆無で、なんだかんだバタバタと過ぎて行った。
仕事が始まってからやっと自分のことを考える余裕ができて、結局まだクリスマスのドレス代の支払いができていないことにハッとした。
橘社長本人に会わなくても、ホテルに出向いて支払いを申し出れば問題ないはず。
今日は残業はなさそうだから、帰りにあそこに立ち寄って、支払いを済ませてこようと思う。
そんなことをぼんやりと考えていると、コートのポケットの中でスマートフォンが音を立てた。
着信の画面には、珍しく母の名前が表示されている。