契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「それって、病院から話されたの? ベリが丘の病院に転院なんて、普通に考えて難しいし」
『なんでもね、匿名の方が援助してくださったって』
「え……?」
匿名……?
『すごくお金持ちの方らしいんだけど』
「ねぇ、お母さん。匿名って、その方のことなにもわからないの?」
『ええ。お礼だけでもしたいと思ってしつこく聞いてはみたんだけど、病院では教えることはできないって言われて……』
「そう……」
湧いて出た話は理解が追い付かず、もっといろいろ訊くべきことがあるはずなのに頭の整理がつかない。
母と通話を終えても、しばらくひとり難しい顔をしたまま昼食を中断していた。
まさか、もしかして……。
向こうに見えているホテルを見つめ、ただならぬ胸騒ぎを覚えた。