契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
そんな風に言われ、今日の昼間に電話で話した母の声が耳の奥に蘇る。
声の調子が良く、嬉しそうに転院の話をしてくれた母。
望んでも受けることのできなかったオペが決まり、間違いなく元気に生きる希望が湧いたに違いない。
それを今、私がこの場で潰してしまったら……。
「俺に興味がなくて構わない。お母様のために、悪い話ではないはずだ」
いつの間にか橘社長は姿勢を正し、私を真正面から見据える。
『お母様のために』橘社長の言葉に後押しされるように口を開いた。
「……わかり、ました。検討します」
私からの返事を受け、橘社長はわずかに口角を上げる。
「いい返事を期待している」
そう言ってソファを立ち上がった。