契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


 母の転院は、私が『HOTEL TACHIBANA』を訪れて一週間もしない日のことだった。

 事前に転院日の知らせを深緑台総合病院から受け、当日の今日は午後半休を申請しておいた。

 初めて訪れるベリが丘総合病院は、外来受付から普通の病院とは違って圧倒された。

 病院というよりはホテルの受付のようで、カウンターの向こうにいるスタッフはホテルマンのような制服を身に着けていた。

 院内は自然光が多く入り込む明るく開放的な造りで、建物は病院だというのを忘れてしまうような近代的なデザイン。入院の手続きを受付で待っている間に手に取った病院案内のパンフレットには、有名建築デザイナーが建物を手掛けたと紹介があった。

 事前に橘社長が転院について手配してくれていたことで、すぐに母の入院した病室へと案内されけれど、その部屋のタイプに驚愕せざるを得なかった。


「澪花、ありがとう来てくれて」


 病室に入ってきた私を、ベッドを起こし横になっている母がにこやかに迎え入れる。


「びっくりした、すごい部屋で」


 個室というのにも驚いたけれど、明らかに普通の部屋じゃない。

 母の横になるベッドも、病院によくある白いシーツのかけられたシンプルなものではなく、花柄の上品なシーツなんかがかけられている。

 部屋にはソファセットも用意され、トイレやシャワールームもついていて見て回りながら驚きの連続。

 全体的にホテルライクな雰囲気だ。

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