契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
オペを受けられると喜び、転院の話が固まってからは声にも覇気がある。気持ちも前向きになって、退院してからのことも希望をもって考えられるようになったのは伝わっている。
母がそんな風に心身ともに回復していけるチャンスを、私の一存だけで棒に振ってしまっていいものか……いや、はずがない。
母には、きちんと手術を受けてもらって、根本から体を治してもらいたい。
「固まりました」
私からの言葉に、橘社長は薄い唇にほんのり笑みを浮かべる。「そうか」と満足げに呟いた。
「悪いようにはしない。必ず、幸せにする」
かけられた言葉に、不覚にもどきりと鼓動を高鳴らせてしまう。
彼の言う『幸せにする』は、契約するにあたって、母の面倒をみること、不自由のないようにするということだ。
それが、この契約の大前提だから……。
「はい。よろしく、お願いします」
深く頭を下げてお願いする私の肩に、そっと手が触れる。
「せっかくの機会だ。お母様の調子が良さそうなら、今からご挨拶に伺いたい」
「あ、はい。問題ないかと思います」