契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
近年になり、徐々にこの地域も開けてくると、一般家庭でも購入できる住宅街や、集客に繋がるショッピングモールができてきた。
それに伴い移り住む人々も変わってきたけれど、未だに昔の名残は随所に残されている。
駅から緩やかに続く櫻坂の先にあるノースエリアの高級住宅地は、入り口に大きな門が聳え立ち、守衛が在中している。関係者以外その先には行くことができないという、私たちのような一般庶民には都市伝説のような場所もあるのだ。
そんな上流階級の人々が集うクリスマス交流パーティーの招待状だなんて……!
「でね、ふたり分の招待状をいただいたから、一枚は澪花にあげる」
「えっ、わ、私⁉︎」
「そ、だから一緒に行こう」
姉は上機嫌で言い、食卓につく。私の席に「これ、渡しとくね」と招待状の一枚を置いた。
「一緒にって、そんなパーティー行けないよ」
一般庶民が足を踏み入れていい場所じゃない。
そんなところに行ったとしても、場違いで居た堪れない気持ちになるだけだ。
「行けないって、どうして?」
「どうしてって……分相応ってものがあるじゃん」
「なーに言ってるの! そんなこと言ってたら玉の輿には乗れないよ? 庶民にだって、たまにはこういうチャンスが巡ってこないと」
ふたり分の取り皿にできたての白菜鍋を取り分け、ひとつを私へと差し出す。くたっとした白菜と水菜、大きめに切った鶏肉から湯気が立ち上っていた。