契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
橘社長の提案で、このまま母に挨拶をすることになる。
「結婚を前提にお付き合いをさせてもらっていると挨拶させてもらう」
「はい。でも、かなり驚いてしまうかと……」
散々、男性はこりごり、一生独身で構わないと言っていた私が、結婚相手を連れてきたとなれば母は間違いなく驚くはず。
一体どうしてしまったのかと思うはずだ。
「幸せな結婚をすると安心してもらえれば、驚きも喜びに変わるだろう」
そんな話をしながら、母の病室に戻ってくる。
ドアを入って顔を合わせるよりも先に、「お母さん?」と呼びかけた。
中から「お帰り」と返事がきて、一緒にドアを入った橘社長を見上げる。
彼が小さく頷き、私が先に母に顔を見せた。
「あのね、紹介したい方がいて……今、いいかな」
母の表情が、どこか構えるように変化する。目を少し大きくし、「紹介したい人?」と訊き返した。
自分に本当にお付き合いしている人や、将来を約束した相手がいたとすれば、こんな風に母に紹介したのだろうか。
切り出した自分も鼓動を速めて、母の方も身構える。そんな、緊張感に包まれた何とも言えない空気。
そんなことをなんとなく想像しているうち、私の横から橘社長が「失礼します」と病室に顔を出した。