契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
一目惚れ──そんな風に言われ、心なしか鼓動が早鐘を打ち始める。
これは、〝契約結婚〟においての設定みたいなもの。事実なわけではないから、こんな風に鼓動を高鳴らせる必要はない。
「必ず幸せにするとお約束します。ですので、澪花さんとの結婚をお許しいただきたい」
先ほどから驚きっぱなしの母は、瞬きを忘れたようにじっと橘社長を見つめる。そして数秒後、ベッドに両手をついて頭を下げた。
「至らぬところも多々あるかと思いますが、澪花は優しく真面目で、私にとって自慢の娘です。どうぞ、よろしくお願いします」
母は、私が橘社長と純粋に結婚すると思って、こんな風に頭を下げてくれている。
胸がチクりと痛む。
私の幸せを心から願ってくれているのに、これは利害の一致の上で成り立つただの契約の関係。愛し合って結婚するわけではない。
でも、母が元気になるのなら、私に他の選択肢はない。
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
橘社長の綺麗な横顔をちらりと見上げ、改めて決意を固めていた。