契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
橘社長と共に病室を後にし、そのまま病院を後にする。家まで送り届けると言われ、お言葉に甘えて彼の車に乗せてもらった。
二度目でも高級車に乗せてもらうのはやはりそわそわと落ち着かない。
「母の件、本当にありがとうございました」
静かな車内に私の声が落ちる。
帰り際、母は自分の治療の援助を申し出てくれたのは橘社長ではないかと気づき、彼に真相を求めた。
『お母様は、私にとっても母となる方です。一刻も早く健康な体を取り戻してほしい』
橘社長は〝結婚相手〟として、完璧なセリフで母にオペに挑んでもらいたいと伝えた。
母は目に涙を浮かべ、下げた頭をなかなか上げなかった。何度も「ありがとうございます」と繰り返す母の心情は複雑だったに違いない。
「今日の母の様子を見ていたら、きっと感情が忙しなかったかなって、思いました」
突然の結婚報告。その相手が『HOTEL TACHIBANA』の社長ということには相当驚いていた。極めつけには、自分の治療の援助をしてくれていたとも知り、ありがたい気持ちや申し訳ない気持ち、本当にいいのだろうかという様々な感情でぐちゃぐちゃになったはずだ。