契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「心臓に負担をかけてしまったかもな。オペが終わってから、挨拶をすればよかったかもしれない」

「はい。でも、大丈夫だと思います。きっと、母にとっては嬉しい知らせだったと思うので」


 横顔に数秒視線を感じる。それが離れたと同時「そうか」と声が聞こえた。

 車窓にはいつの間にか自宅周辺の景色が流れ、思い出したように口を開く。


「あの、今後の流れをうかがっていませんでした」


 そう切り出してみると、なぜだか橘社長はぷっと噴き出した。


「今後の流れって、仕事の打ち合わせみたいだな」

「あ……」


 変なことを言ったつもりがないけれど、橘社長からすればおかしかったらしい。

 真面目な問いだっただけに、急激に恥ずかしくなり頬が熱くなる。


「すみません。あの、でも、入籍はどうするのかとか、引越しなども必要なのかな、とか……」


 契約結婚というものを橘社長がどういう形で考えているのか、まだ詳しく話を聞いていない。ほんの数時間前に決まった話だから仕方のないことだけど、今日のうちに訊けることは確認しておきたい。


「まずは、お互いのことを知る時間を作らないか?」

「え……? お互いを知る時間、ですか?」

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