契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「まったく、私みたいに気合い入れてパーティーに臨んだ方にはなんの出会いもないなんて、神様はあまのじゃくよね」
姉はそんなことを言ってくすくすと笑う。キッチンから淹れたてのコーヒーのカップを持ってリビングのソファに腰を落ち着けた。
姉はあのクリスマスパーティーでは数人と連絡の交換もしたらしいけれど、その後改めて会うような方はいないという。
「でもさ、澪花にいい人が現れて本当に良かったよ。これで、お姉ちゃんも結婚相手本気で探せる」
「お姉ちゃん……」
「なんてね。冗談だって」
私の心配をしていたせいで、姉にも思うところがあったのだろうと知る。
『ごめんね』と言うのはなんか違う気がして、「ありがとう」と口にした。
リビングにインターフォンが鳴り響く。
「あっ、ほら、お迎え来たんじゃない?」
リビングの掛け時計の針は十時五十五分の指している。約束の時間を目前にして、橘社長がお迎えにきたに違いない。
慌ててコートを羽織り、用意しておいたバッグを手に持つ。
「じゃあ、行ってくるね」
少し慌てて玄関に出ていくと、姉も一緒に玄関に出てきた。
「私からもご挨拶、してもいいかな?」
「うん、してくれるの?」
「もちろんでしょ。妹をお願いしますって言っておかないと」