契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
玄関を出ていくと、家の前には橘社長の黒塗りの高級車が停車している。
後から出てきた姉が「うわ……」と、お迎えの車を見てだろう声を上げた。
門の前で待つ橘社長の姿が、玄関から出てきた私たちに気付いたように門の前に現れる。
橘社長は今日もスーツで、チェスターコ―トを羽織っていた。こちらに向かって「おはよう」と微笑む。
「おはようございます。すみません、ここまで来ていただき」
私と共に出てきた姉に、橘社長は丁寧に頭を下げた。
「初めまして。橘と申します」
「あっ、初めまして。澪花の姉の千葉萌花と申します」
普段とは違う少し早口な喋り方から姉の緊張が伝わってくる。
「ご丁寧にありがとうございます。先日、お母様にはご挨拶させていただきましたが、澪花さんと結婚を前提にお付き合いさせてもらっています」
改めて彼の言葉でその事実を耳にすると緊張感に包まれる。
同時に、この契約結婚は夢ではないのだと改めて思い知らされた。
「はい、澪花から話は聞いています。母のことも、本当にありがとうございました。妹を、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、至らぬこともあるかと思いますが、よろしくお願いします。日を改めて、食事にでも招待させてください」
姉はあからさまに動揺を露わにしながら「は、はい!」とまた深々と頭を下げる。
「行こうか」
「はい」
今日もまた、橘社長は助手席のドアを開けて私の乗車をエスコートしてくれる。
姉に「行ってらっしゃい」と見送られ、助手席に乗り込んだ。
運転席に乗り込み、また丁寧に姉に頭を下げた橘社長は、住宅街の片隅から静かに車を発進させた。