契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
どこかに向かって走り出した車内で、今日はどんな場所に行きなにをするのだろうと疑問が募る。
場所も目的も聞いていなかったから、一応どこに行っても差しさわりのない落ち着いたベージュカラーのワンピースという装いできたけれど、問題ないだろうか……?
「今日は、ゆっくり食事でもできたらと思ってる」
「あ、はい」
「……? 食べるのは嫌いか?」
橘社長はどこか探るように質問してくる。たぶん、私の返事が浮かないものに聞こえたのだろう。
「いえ、そんなことは。でも、あの、ご期待に副えることはできないかと思うので」
「期待に副える?」
「はい。私と食事をしても、きっと楽しませることはできないですから……」
男性が苦手だとはちゃんと話している。
食事に行っても、会話を楽しめるとは思えないし、どんな席になるのか想像もつかない。つまらないと思わせてしまうのは間違いないから。
「面白いことを言うな」
だけど、なぜだか橘社長はくすくすと笑う。面白いことなんてひとつも言ったつもりはない。
「もうすでに十分楽しいけどな」
「え?」
「まあいい。食事の前に、連れていきたいところがある」