契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
イマイチ、契約結婚をしたら彼との関わり方がどうなっていくかがわかっていない。
そういう細かい部分まで話していないからだ。
でも、契約とはいえ、結婚をすれば夫婦という関係になるのだし、こうして手を繋いで歩くのは普通のこと。
そうは頭でわかっているけれど、心がそれを処理できない。
心臓は普段の数倍も早く打っているし、繋いでいる手の中はこんなに寒くても汗をかき始めている。
どこを見ていたらいいかわからず視線も定まらないし、なによりそわそわして気持ちが落ち着かない。
エレベーターで一階まで上がり、そのままエントランスホールを出ていく。
春には満開の桜が美しい櫻坂の大通りに出ていくと、橘社長はすぐのビルへ吸い込まれるように私を連れ入っていく。
しかし、そこはドアマンが丁寧に入口のドアを開いてくれるような高級店。
内心『え え⁉』と思っているうちに店内に足を踏み入れていた。
「せっかくだから、なにか今日の装いをプレゼントしたい」
「え、そんな」
「今日の雰囲気も好きだけど……こういうドレスも似合うと思う。こっちもいいな」
繋いだ手を離し、その手は腰へと回される。寄り添ってドレスを見て回る橘社長はどこか楽しそうで、次々とドレスを手に取っていく。