契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
それから十分もしないうち、どうしても落ち着かなかった私は案内された店舗奥のソファ席から立ち上がっていた。
どうやらここは、ⅤⅠP専用の部屋かなにかだろう。
先ほどのスタッフが買い物した紙袋を数個持ってくると、「お飲み物を用意します」と申し出てきて、思わず「お構いなく!」と立ち上がってしまった。
「あ、少し、外を見てきます」
間が持たなくなって席を後にし、店外に出ていく。
すぐに戻ると言っていたけれど、橘社長が戻ってくる気配はまだない。
店内で待つよう言われたけれど、やっぱりどうしても居たたまれないし、このままここで待っている方が……。
「話が違うじゃねーか!」
どうしようかと思っていた時、近くからこの場所にそぐわない怒鳴り声が聞こえてくる。
何事だろうと自分のいるビルのとなりの建物に目を向けてみると、となりのレストランの入り口前で男女のカップルが黒服の恐らくレストランスタッフの男性に詰め寄っていた。
「申し訳ありません。そのようなことは把握しておりません」
「おいっ、客に対してその態度はないだろ!」
スタッフに突っかかる男を、一緒にいる女性が止めに入る。「もう行こうよ」と女性は言い、引っ張られ振り向いた男の方の顔を見て、目を見開いた。