契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
う、嘘……。
瞬きを忘れた目に映るのは、もう二度と会いたくなかった昔の彼。
どうしてこんなところで会ってしまったのだろうかと思っているうち、彼とバチっと目が合う。
向こうもなぜこんなところに私がいるのかと思ったのだろう。
確認するようにじっと鋭く見つめられた。
どうしよう。気づかれたくない。
そんな思いから咄嗟に顔を逸らす。
「おい」
でも、時すでに遅しだったようだ。
ビクッと肩がわずかに跳ねる。
「やっぱり澪花か。こんなところにいるから、見間違いじゃないかって思ったけど」
昔からそうだった。彼は事あるごとに私に対して嘲笑気味に笑った。
別れて大分経った今も、それは変わらないようだ。
「お前みたいなのが、こんなところでなにしてるんだ? 用ないだろ」
確かに、彼の家庭は我が家より裕福だった。
実家は墓石屋をしていて大きな家に住んでいたし、駐車されている車も高級車だった。
だけど、彼にこんな風な言われ方をする筋合いはない。用がない身分だというのは自分が一番よくわかっている。
取り合わないつもりで、体の向きを変え拒否の姿勢を見せる。これ以上話しかけないでほしい。そんな気持ちを込めて。
それなのに、彼には伝わらず。わざわざ私の前へと回り、フンと鼻で笑った。