契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「オシャレしちゃって。でもな、ここら辺は平凡で地味なお前なんかがくるところじゃねーよ」
なんでそんなこと言われなくてはいけないのか。悔しく惨めな思いに涙が浮かんできそうになった、その時だった。
「澪花」
名前を呼ばれたと思った次の瞬間にはさっと肩を抱かれ、そのまま今さっき出てきた店舗へとドアマンが開いた扉を入っていく。
「今のは?」
店舗の奥へと進みながら橘社長が訊く。
「あ……以前に、お付き合いしていた人で……」
なんとなく言いづらい。けれど、隠すことでもない。
橘社長は「なるほど」言い、まだ受け取っていなかったショッパーをスタッフから受け取る。
「ありがとう」と頭を下げるスタッフたちにお礼を言い、踵を返してお店を出ていった。
店舗前には、未だ元カレと連れの女性が立っていて、出てきた私たちをじっと見つめている。
「ついでに車も移動させてきたんだ」
橘社長はしっかりと私の肩を抱いたまま、櫻坂に停車させてある車へと私をエスコートしていく。
そのまま助手席に乗せられた。