契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


 櫻坂から向かった先は、ベリが丘ノースエリアにある会員制オーベルジュ。

 駅近とは思えない大自然に囲まれたオーベルジュは、会員とその関係者しかその中に入ることを許されない。

 関係のない一般人にとっては、まさに秘密の花園といった場所。

 オーベルジュの敷地は高い塀に囲われていて中の様子は窺えないから、周囲からは中がどうなっているかもわからないのだ。

 風の噂では、中は異国の地のようだとか、ファンタジーの世界感だとか、とにかく駅から数分のところにある施設とは思えない場所のようだ。

 高校生の頃、友人と塀の外側を歩きながら、中がどうなっているのか妄想を膨らませたことを懐かしく思い出す。

 入口は、観音開きの高いアイアン製の門が出迎える。白い塀で囲われる敷地唯一の大きな入り口は存在感を放ち、この中が特別であることを主張している。

 橘社長の車が門に近づくと、すぐに門番をしている深緑の制服を身に着けたスタッフが頭を下げる。

 車やナンバーで把握されているのだろう。前の門が自動でゆっくりと開いていく。

 門の先は真っすぐにしっかり舗装された道が続く。その道は欅並木となっていて、まるで公道のようだ。

 門を入った車は、その道を進んでいく。敷地内というのに、いったいどこまで続くのだろう。

 周辺は緑に囲まれる。右手は常緑芝だろうか冬でも青々とした芝が綺麗に刈り込まれて広がり、木々が点在して森のようになっている。左手は入り口を入って少しすると大きな池が見えてきた。

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