契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「お腹は空いているか」
「えっ、あ、はい。ほどほどには」
初めて目に映す景色に窓の外をじっと見つめていたところ、橘社長から声をかけられ振り向く。
鼻筋の通る綺麗な横顔にどきりとした。本当にどの角度から見ても整っている。
「それならよかった。食事にいこうと事前に言ってなかったからな。食物アレルギーとか、食べられないものは?」
「苦手なものも、アレルギーも特にはないです」
そんな話をしているうち、車は駐車場に到着する。
すぐそばには、白い外壁の建物が見える。ところどろこに煉瓦が貼られ、蔦植物が這っている雰囲気は、どこかヨーロッパの田舎町にでもあるお屋敷のようだ。
橘社長は「ちょっと待ってて」とエンジンを切った車から降り、もうお決まりのように助手席のドアを開けに来てくれた。
「ありがとうございます。あの、車は自分で降りられますので」
「そんなことを気にしているのか?」
橘社長のような方に、そんな細やかな気を遣われたら居たたまれなくて仕方ない。
そもそも、車から降りるのにドアを開けてもらったことなんて生まれてこの方経験がないのだから。