契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「こんなこと、当たり前だから気にしなくていい」


 きっと、育ってきた環境で当たり前のことなのだろう。車の乗り降りだけではなく、常にレディファーストで橘社長は動いている。それは、しようとして気にしている様子もなく、もう身について自然なことなのだろう。

 やはり、一般庶民とは格の違いを感じさせる。

 橘社長は降車してきた私の手を取り指を絡ませる。もう自然と手を繋がれてしまい、鼓動の高鳴りを感じながら連れられていく。

 でも、どうしても自分から指に力を入れて握り返すことはできない。どちらかというと掴まれているような感覚だ。

 向かった白い建物の入り口には、私たちの到着を待っていたかのように黒服の男性が立っていた。


「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」


 橘社長はここの会員ということ。どのくらいの頻度で訪れるのだろう。

 一歩中に足を踏み入れると、温かさにほっとする。別の女性スタッフが現れて「お召し物をお預かりします」とコートを預かってくれた。

 高い天井を見上げる。エントランスは大きなお屋敷の玄関という感じで、解放感のある二階まで吹き抜けだ。真ん中にアンティーク調の大きなシャンデリア照明がぶら下がっている。外壁と同じ白い石造りの壁。床は煉瓦が敷き詰められたような造りだ。

 スタッフに「ご案内いたします」と声をかけられ、橘社長のあとに続いて奥へと進んでいく。

 案内されたのは、大きなガラス窓の向こうの景色を望める個室だった。

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