契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「すごい……」
部屋に入った瞬間、つい心の声が漏れてしまう。
スタッフが椅子を引いて着席するのを待っていて、「すみません」と慌てて席についた。
広がる景色は、街中にある施設とは到底思えない。
北海道とか、広大な土地に緑が広がるようなそんな景色だからだ。
一面に広がっている芝生の向こう、木々が点在している。そこにはなんと白馬が二頭闊歩していて、目が釘付けになった。
「料理はコースでお願いしている。ドリンクの好みは」
向かい側にかけた橘社長がドリンクメニューと思われる細長い革張りのメニューを手渡してくる。
「特に、ないので……一緒で構いません」
メニューを受け取ることを遠慮し、橘社長に合わせることを伝えた。
食事の席なんて間が持たなそうだと思ったけれど、この景色のおかげで緊張も紛れる。
程なくして、食事の準備が始められる。細長いグラスにはスパークリングウォーターと思われるものが注がれ、目の前には前菜のプレートが置かれた。
「季節の野菜と蟹のテリーヌです」
蟹の身と彩のいい野菜が詰まったテリーヌ。それをぐるりと取り囲むように野菜とソースが飾られている。どこか躍動感があって、ダンスをしているようだ。