契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「こうしているのも、母のためなので。それに、あなただって私を利用しようと思って、契約を持ち掛けてきたんですよね?」
それは間違いない。お互いの利益のために結婚という関係を結ぶのだ。
それなのに、興味を持つなんて、好きになる必要なんてあるのだろうか。
「そう思っているなら、仲のいい夫婦を演じてもらわないとな」
「え……?」
「夫婦なんていいながら、ぎこちなかったらおかしいだろう?」
確かに、正論を述べられて言葉が出ない。
今のままの私たちの状態では、誰が見ても夫婦とは思えないだろう。
「難しく考えることもない。まずは普通に、お互いのことを知っていけば自然と関係はできてくる」
「はい……」
そうは言われても、一体なにを話せばいいのかわからない。
男性との関わり合いに乏しい私は、自ら話題を出すことなんてハードルが高すぎる。
「イブの夜、パーティーにはどこの招待で?」
困っていたところ、橘社長の方から話題を出してくれる。
目を向けると、テリーヌにフォークを入れながらリラックスした様子だ。
「姉が、橘社長のホテルのラウンジに勤めていまして。オーナーの方から譲ってもらったそうで」
「そうだったのか」
「あの時はお話しなかったのですが、私はパーティーには出席してたわけではなくて」
「そうなのか?」
頷いてみせると、橘社長は「ではなぜ?」と不思議そうに訊く。