契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
デザートが提供されるまでの間、外に出て庭園を散歩することになった。
真冬の一月だけど、今日は日差しが出ていてそこまで寒くはない。コートを羽織れば散歩も快適だ。
レストランを出ていくと、レンガの埋まる道の脇にクリスマスローズがところどころ咲いている。食事中、窓の向こうに見えていた白馬は、今もまだ優雅に草原を歩いていた。
「俺ばかり質問してるけど、澪花から聞きたいことはないのか?」
言われた話の内容よりも、〝澪花〟と名前を口にされたことに意識が集中する。
今日はちょこちょこ名前で呼ばれていて、そのたびにドキドキしてしまっているのだ。
「あ、えと……」
そう言われてみれば、今日は橘社長から出してもらった話題について話すことばかり。
仕事のことや、家族のことなどが主だったけれど、それもすべて橘社長が話を振ってくれた感じだ。
私は受け答えに精一杯な感じで、話題を振るというところまでできなかった。
「では……ご趣味は?」
そう言った途端、横からふっと笑う気配を感じて彼の顔を見上げる。丸めた手を口元に当て、くすくすと笑っていた。
「なんか、どっかで聞いたことのあるセリフだな」
あっ……。
言ってみて数秒、おかしな発言をしたと気づく。
ちょっと、これじゃよくあるお見合いの席みたいな……。
急激に恥ずかしくなってきて、赤面しているのが自分でわかる。