契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「その、〝橘社長〟というのは今日で終わりにしてもらいたい」

「あ……」


 特に意識しないでそう呼んでいた。でも、これからの関係を考えたら確かにその呼び方はおかしい。人が聞いてもよくないだろう。


「そうですね。では……」

「名前で」

「蓮斗さん、ですね」


 初めて口にした名前は予想以上に鼓動を高鳴らせる。

 暗くなり始めた車内で、蓮斗さんの横顔にほんのり笑みが浮かんだのを見た。


「慣れるまで、無意識に間違えたりしてしまいそうですけど、早く慣れるようにします」


 急に呼び方を変えるとなると、しばらくは意識しないといけない。

 心の中で何度か『蓮斗さん、蓮斗さん』と呼んでみた。

 車は見慣れたご近所の道を走り出す。

 蓮斗さんは間違えることなく私の実家の前に車を停車させた。

< 82 / 199 >

この作品をシェア

pagetop